2006年06月11日

[なまえのない]

なまえのない男がいました。

なまえのない男は、誰にもなまえを呼ばれることはありません。
なまえのない男は、母親がいるので、それでも不便は感じていませんでした。
なまえのない男は、いつ起きても、いつ寝ても、誰にも何も言われることはありません。

誰にも何も言われないので、遊びたいときに好きなだけ遊ぶことができます。
なまえのない男は、いまが一番楽しいと思っていました。

なまえのない男は、えらそうです。

なまえのない男は、えらそうなので、誰の事も信じていませんでした。
なまえのない男は、えらそうなので、誰も彼のことを信じていませんでした。
なまえのない男は、えらそうなので、世の中すべてがくだらないと思っていました。

世の中すべてがくだらないので、外には出ません。
なまえのない、えらそうな男は、いまが一番くだらないと思っていました。


なまえのない男は、えりごのみもします。

なまえのない男は、えりごのみをするので、自分のすきな食べ物しか口にしません。
なまえのない男は、えりごのみをするので、自分のすきな人としか話しをしません。
なまえのない男は、えりごのみをするので、自分のすきな世界でしか生きていけません。

すきな世界でしか生きていけないので、世界はとても小さなものになっていきます。
なまえのない、えらそうで、えり好みをする男は、いまここが一番自分の好きな世界だと思っていました。



でも、

なまえのない男は、たいくつです。

好きなときに好きなだけ遊べても、たいくつ。
えらそうにして、世の中はくだらないと思っても、たいくつ。
好きなものだけをえりごのみしても、たいくつ。

なまえのない、えらそうで、えりごのみする、たいくつな男は、それでもいまが一番楽だと思っていました。



あるとき、なまえのない男が、お腹が空いたのでひさしぶりに母親にご飯を作ってもらおうと呼びかけると、返事がありません。
母親は、ずいぶん前に年老いて倒れていました。


仕方がないので、外に出て、ご飯を食べさせて貰うことにしました。


はじめに入った、おおきなレストランでは、
「なまえがないのでは、予約を承ることはできません」と断られました。


つぎに入った、ちいさな食堂では、
「えらそうなやつに、食べさせるメシはねえ」と断られました。


さいごに入った、そまつな雑貨屋では、
「えりごのみしてたら、うちには食べるものなんてないよ」と断られました。


夜が更けて、すべてのお店が閉まると、なまえのない男は道ゆく人に何か食べ物をくれないかと話しかけてみますが、誰も相手にしてくれません。

ひとり、またひとりと、なまえのない男の前を通り過ぎて、いなくなっていきます。

唯一相手にしてくれたのは、一人の女の人でした。
なまえのない男は、いままでのいきさつをすべて話しました。


すべてを聞き終えた女の人は、
「あなた、たいくつなひとね」と去っていきました。


なまえのない、えらそうで、えりごのみをする、たいくつな男は、その場でたおれ、動けなくなりました。

(おわり)




今日は趣向を変えて、思いつきで大人のメルヘンを書いてみました。
僕の処女作です。ご感想いただけるとうれしいです。






posted by molten at 10:54| 埼玉 ☔| Comment(7) | TrackBack(0) | 分類不能 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
びっくり。
moltenこういうことするのな。

えっと、いろいろ思うところはあるのだけれど、
コレのモデル俺?
Posted by とく at 2006年06月11日 23:11
さっそくのコメント、ありがとうございます。

もちろんモデルはとくさんではありません。
このモデルは、社会人ではありません。

でも、色々と社会的に話題になる人です。


ていうか、僕がそんな物語、書けると思いますか?

これは「ことばあそび」ですよ。

誰かがきがつくまで、「こたえ」は言いません。

何か、きがついた方は、コメントをいただけると嬉しいです。

では、また。
Posted by molten at 2006年06月12日 10:48
再びmoltenです。

「こたえ」は言いませんなんて書いちゃって、調子に乗って、我ながら恥ずかしいですね。

べつに全然たいしたこと無いんです。
ちょっと思いつきで書いただけなんです。




このあと全然反応がなかったら、たぶん話のネタとして、自分で書いちゃうと思います。

それまでに何かご感想などをいただければ、非常に嬉しいです。

思い上がってしまって、ごめんなさい。
ではまた。
Posted by molten at 2006年06月12日 20:31
久しぶり。Mです。
上の文章を読んで思いついたのはニート。

Namaenonai
Erasoude
Erigonomiwosuru
Taikutsuna

こんな単純なことではないかね。。。
失礼しました。。。

このブログ、ちょくちょく読んでますよ。
Posted by Philippinean M at 2006年06月13日 13:43
M氏、久々のコメントありがとう。
まだ見てくれていたんだね。

ええと、この話はここで終了〜。

M氏(星新一みたいだね)の言うとおりでございます。

これは「ニート」の話でした。

「えりごのみ」のあたりで苦しさをアピールしているんですが、やはり気づかれましたね。

他にも色々とメタファーを盛り込んだつもりですが、もう僕が説明することはありません。

下らなくてすみませんでした。

これを書き上げた時は、「お、これは『もし世界が100人の村だったら』ばりにネットを駆けめぐるかも」なんて思いましたが、今は恥ずかしさで一杯でございます。

また、なんか思いついたらこういうのもやってみようかなと思いますので、その時にはひとつよろしく。

ではまた。
Posted by molten at 2006年06月13日 17:45
ニートに代表される、現代の若者(?)の風刺なんだろな、
とは思ってたんだけどね。
(そういう意味での「俺のこと?」ね)
ことば遊びにはまるっきり気がつかなかったよ。

だって「えりごのみ」のあたりは苦しくもなんともないじゃん。
むしろほかに表現のしようがないじゃん。
と、ニート予備軍に日常的に関わる私は思うわけですよ。

と、言い訳してみる。
「ことばのパズル」苦手です。
テレビの芸能人にも負けるもん。
Posted by とく at 2006年06月14日 10:55
コメントありがとう。
こんなに後を引いて、本当に嬉し恥ずかしいmoltenです。

でもとくさん、僕たちはもう「現代の若者」じゃないよ…。
いくらゲームやり倒してても、ガンダム好きでも、お金稼いでるからね。
そこ、自信もってこうぜ!

まるっきり気が付かなかったというのは、僕にとって褒め言葉でした。

「えりごのみ」は、「え」で始まる言葉(で、ニートを想起させる)を探すのでちょっと考えたんですよ。
ホントにちょっとだけど。

時間的に、たぶん1時間ぐらいで書いてます(休日は10時起きだから)。

まだまだ感想を書いてくれたら、さらに嬉しいmoltenでした。

では。
Posted by molten at 2006年06月14日 18:32
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