2006年07月26日

[竹藪の男]

僕が中学校三年生の時まで住んでいた家は、平屋で庭だけは広い、田舎ならではの木造建築でした。

家の南側は庭。
東側に庭から続く細い通路があり、玄関。
西側はすぐ、隣の家との垣根があり、
北側は、小さな竹藪と、その奥には小さな部品工場のフェンス(金網)というつくりです。

決して大きな家ではありません。風呂とトイレと台所と部屋が3つ、だったでしょうか。

玄関から一番奥の、北西にある部屋が、僕と弟の部屋でした。

僕と弟は小さい時から二段ベッドで寝ていました。
親父の作ったあみだくじで、僕が下、弟が上と決まっていました。

以下、おそらく僕が小学校五、六年、弟が一、二年の時の話です。




当時、僕の家には当然クーラーなど無く、僕らの部屋には扇風機さえありませんでした。

結果、夏の暑い夜は、北側の窓を開けて寝ることになります。
しかも、網戸もなかったので、親父が外側から木の窓枠に蚊帳の生地のような、青い網を釘で打ち付けて、蚊よけとしていました。

そんなある夜、弟が急にベッドの上からあわてて降りてきて、親の元へ向かったのです。

眠たかった僕も、ただごとでない気配で起こされ、弟の帰ってくるのを待って、どうしたのか聞きました。

弟は「人が入ってきた」というのです。


弟は窓の方を向いて寝ていた時に、なぜか目が覚め、外に人のいる気配を感じたといいます。

そして、青い網の向こう、竹藪の中を、真っ黒で大きな男が、頭から血を流しながら、東からに西へ通り過ぎたというのです。

弟は間違いなくフェンスの手前、竹藪の中を歩いていたと言いました。
工場の中では無く、家の北側すぐのところを歩いていた、と。

男がこのまま歩いていけば、西側の垣根沿いに南へ抜けていくしかないので、南側の部屋で寝ている両親が気づくはずだと思い、親に聞きに行ったというわけです。

親は、「そんな人は来なかった」と言ったそうです。
僕も、寝ていたせいもあり全く気が付いていませんでした。


でも、ちょっとおかしいのです。


弟は男の肩当たりから頭まで見えた、といっていました。
腕を振っているのが分かった、ともいっていました。



男が大きすぎます。



二段ベットは高さがどのくらいだったが覚えていませんが、かなり大きいものだったので、頭が見えるためには160cmぐらいは必要で、肩や腕ともなればさらに10〜20cmは欲しいところです。

しかも、北側の竹藪がある地面は、部屋の床よりもかなり低いのです。
滅多に出入りはしませんでしたが、僕らの部屋の窓から北側に出ようと思うと、外の地面がとても低く、窓枠から僕の足がやっと届くようなところでした。30cmぐらいは低かったかも知れません。


つまり、窓の近くの竹藪を歩いて、二段ベッドの上から肩まで見せられる人間は、いないのです。


しかも、竹藪はかなり密集する感じで歩くのも容易ではないはずです。
頭から血を流していた、というのも忘れ、存在できない男に僕らはしばらくどう考えて良いか分かりませんでした。


弟はそれ以来、しばらくは母親と寝るようになり、僕は暑い夜でも窓を閉め切って、それでも磨りガラスに人影が映るのではないかと思いながら寝ていたのを覚えています。

その家は、老朽化もあって、僕らが引っ越してすぐ更地となり、今ではコインパーキングになってしまいました。


今日は「幽霊の日」ということで、昔話でした。


posted by molten at 11:38| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | プライベート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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