アンコール遺跡の入口での話です。
ではどうぞ。
免許取りたての少年が運転する車検切れの車にのって、僕らはアンコールへ向かう。
ホテルから15分で、アンコール遺跡の「入り口」へ到着した。
アンコール遺跡は、アンコールワットやアンコールトムなどを代表とする寺院遺跡群をいい、敷地内には大小様々な遺跡があるのだが、その敷地内へ入るために、入場許可がいる。
この入り口でその許可証を提示しなくてはならないが、僕らは初めてなので、ここでその許可書を作ってもらうことになった。
許可書には顔写真が必要というので、事務所に行き、写真を撮ってもらう。
ここの職員も、空港の人と同じでとにかく陽気だった。
デジカメで写真を撮るのだが、エイコ、僕の順で撮影するときに、「オネーサン、ハイ、ワラッテー。ハイオワリ。ハイ、オニーサン、オコッテー。」と日本語でジョークを飛ばしてくる。
僕は思いきり怒った顔をして、写真を撮った。
許可書ができるまで外で待っていると、許可書チェックをしている職員が、ヒマなのか僕らのそばに来て、「ニホンジン?」と聞いてくる。
うなずく僕ら。
そして、僕をみて「オニーサン、スコシカッコイイネー」と言った。
僕は「はは、ありがとう」と愛想笑いをていると、彼は続けて、
「ワタシ、メチャカッコイイネー」。
ネタである。日本人を笑わせるためのネタを持っているのだ。
しかも客をいじるタイプの。
エイコは爆笑だが、僕は、なんでこんな林家正蔵みたいな奴にいじられなきゃいけないのか、とちょっと複雑だった。
というより、カンボジア国民はみんなこんな奴ばっかりなのか、と疑問に思った。
写真データをパソコンで許可書に取り込むらしく、あっという間にパウチ加工された許可書ができあがった。
3DAYSパスポートということで、「8/19−8/21」という日付と、名前、それから顔写真の入ったカードが手渡された。
軽いノリで撮ってしまった、めちゃくちゃな激怒写真の入場許可書を、僕はこれから遺跡に入るたびに見せ続けることになる。
(続く)
カンボジアの人は、みんなこんな人ばかりじゃありません。ねんのため。