8月19日もそろそろ終盤です。
では、どうぞ。
アンコールワット、第3回廊で雨宿りである。
スコールはすぐ止む、ということをこの辺りから理解していた僕らは、しばらく回廊で休憩を取ることになった。
他の観光客も大雨の中、特に見るもののない(といったら失礼か)回廊の中をぐるぐる回っていた。
回廊の大きさは、ぐるりと見渡せるほど。1周200mほどか。
よく見ると、窓に施されている格子が、玉のものすごく多いそろばんのようなデザインで、じつに精巧だった。
その格子の向こうには、森と雨に覆われた遺跡群がちらほらと見える。
回廊の中央(内側)は、沐浴用のため池となっていて、普段は水が無いのだが、スコールによって小さな水たまりを作っていた。
しばらくすると雨も治まり、階段を下りて帰ることになった。
休憩中、別行動をしていたソンディさんを探すが、人混みで見あたらない。
困ってうろうろしていると、おそらく現地人であろう別のガイドさんが、声を掛けてきた。
「出口はあっちだから、あっちにいるかも知れませんよ」。
とても流暢な日本語だった。礼を言ってそちらへ向かう。
そして、「急がないと、サンセットに間に合わなくなるよ」とも言った。
どうやら、アンコールワットを離れ、西側にある小高い山から、夕日に染まるアンコールワットや、沈む夕日を眺めるというのも、観光のセオリーのようだ。
もちろん僕らもその予定だった。
ソンディさんも待っているだろうと、僕らも出口へと急ぐ。
出口、というのは、要するに降りる階段のことだ。
第3回廊から降りる階段は、東西南北の4ヶ所あるのだが、手すりが付いているのは1ヶ所だけで、そこは「降り口専用」となっていた。降りる方が危険だからである。
つまり、入り口は3ヶ所で出口は1ヶ所。
しかもこのスコールで雨宿りをしていた客が一斉に帰っているので、出口は大混雑であった。
人混みの中でソンディさんを見つけ、言われるがままに行列に並ぶ。
僕らの周りには青年海外協力隊のような、共通の青いサッカーユニフォームのようなものをを着た集団が楽しく雑談しており、彼らの話を聞きながら進んだ。
その中で、豊富な海外経験を語る、太めの中年男性が、
「航空チケット予約で、オペレーターに『隣に座る人を女性にしてくれ』というと応じてくれるのだが、どんな女性が来るかわからないから、この間は太った女性が来て困った」
というジョークを飛ばしていたのを思い出す。
もちろん、全く笑えない。
(続く)
この「海外青年協力隊」は、うっとうしかった。