サイゴン川クルーズ、出航です。
ではどうぞ。
ビールと食事で、ゴキゲンな船内。僕らは異常に大きな春巻きや、カエルのももの唐揚げなどで盛り上がりながら、船が出発するのを待っていた。いろんな川を見ましたが、もっとも味気ない夜景でしたね。
カエルの唐揚げははじめてだったが、よく「鶏肉のようでおいしい」と聞くので、抵抗無く食べた。確かに、ジューシーな鶏肉という感じだ。
しかし、骨が小さいので、噛み砕いてしまわないようちょっと注意が必要である。
牛肉や豚肉と比べて、値段も安かったと思う。
よく考えると、今日は朝食以来、ろくな食事をしていなかったことに気づく。
しかし、いっこうに船が動かない。
出航の時間は過ぎていたのだが、どうやらお客待ちをしているらしかった。
ある程度数を乗せないと、採算が取れないのだろう。
確かに、僕らのあとからも、ちらほらとやってくるお客がいた。
そのうち、ベトナム人の3人家族のほかに僕らの座っているテーブルの隣にも、フランス人の6人ぐらいのグループがやってきた。
同じようにビールを飲んで、陽気に盛り上がっている。
食事をはじめて30分ぐらい経ってから、ようやく船のエンジンが掛かり始める。
とても大きな船なので、全く揺れを感じない。エンジンの振動もあまり無かった。
船はゆっくりと岸を離れ、サイゴン川を進み始めた。
船が動くにしたがって当然だが風も強くなり、とても涼しい。
料理は早く食べないと冷めてしまう。空いていたビールの缶が、テーブルから転げ落ちる。
ほとんど食事は済ませてしまったので、僕らはビールを飲みながら、外の景色を眺めていた。
船着き場にあった、企業のネオンは、間もなくなくなった。
街の灯りも少なくなって、どんどん暗闇になってくる。
と、ぽつりぽつりと街灯のような灯りが見え始めた。
何かと思ってよく見ると、真っ黒な船体のマストにつけられた船のライトだ。
石油か何かのタンカーだろう。何隻も連なるように停泊していた。
…それが、延々と続いた。
タンカー、タンカー、またタンカーである。
まったく、夜景を楽しむクルーズではなかった。
僕はこれを「タンカーまつり」と命名した。
(続く)