サイゴン川クルーズも佳境に入ってきました。
ではどうぞ。
サイゴン川は、タンカーのメッカだった。
ここは川崎です、といわれても違和感はないだろう。
川崎にしては陸地が暗すぎるか。
僕らが見ている側の岸だけがこんなに殺風景なのかも知れないと思い、船内を歩いて反対側の河岸も見てみる。
こっちは、タンカーの灯りすらなかった。
漆黒の闇だった。
なんだか「移動しているので風が涼しいただのレストラン」である。
乗船チケットがないのも当然だった。
外にあまりにも魅力がないので、船内の様子をうかがう。
隣にいたフランス人グループが、餃子の皮のようなもので具を包んで食べる料理を注文したのだが、食べ方がわからなくて困っていた。
実はちょっと前に僕らもそれを注文して、店員に食べ方を聞いていた。
「皮」があまりにも固く、重なってくっついているので、僕は初めそれが食べ物だと思わなかったぐらいだ。
てっきり、プラスチックのシートだと思っていた。
親切心で食べ方を教えて(もちろん身ぶり手ぶりである)、ちょっと感謝されつつ、エイコの動きが面白かったのか、笑われた。
なぜか、エイコはこっちへ来て笑われっぱなしである。
ビールの缶もたまってきて、そろそろお腹も膨れてきた頃、テーブルの先にあるステージで、なにやら楽器演奏が始まった。
ベトナムの楽器なのかわからないが、マンドリンのような音を出す弦楽器がいくつか、それから小さなスチールドラム。
何曲か、現地の曲であろう演奏が続いた後、聞き覚えのある曲が流れてきた。
何の曲だったか、考えていると、エイコが唐突に答えを出した。
「『ゆいまーる』だ」。
なぜか、沖縄の童謡を、ホーチミンで聴いた。
(続く)
クルーズはもうちょっと書けます。書きます。